寝るときの『お供』が必要なわけ

移行対象

寝る前にぬいぐるみなどがないと寝れなかったりしたことはありませんか?子どもによっては、こうした行動があったりなかったりするのはなぜでしょうか。児童精神科医ウィニコットは、こうしたぬいぐるみなどを移行対象と呼びました。下の図を見て下さい。図1では母親(乳房で表現)と赤ちゃんとの間のやりとりは幻想とあります。また図2では移行対象が置き換わってます。つまり赤ん坊の時は「いつでもお母さんはおっぱいをくれる」という幻想を抱きます。そして,『現実』に移っていくための『つなぎ』が移行対象です。

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準備期

イギリスにはテディベアというクマのぬいぐるみがありますよね。テディベアは移行対象に使われるものとして、子どもに与えられたものだと思います。赤ちゃんはお母さんを最も安心できるものとして生まれて過ごします。しかし,いずれお母さんから離れて眠らなくてはならなくなります。そのため、お母さんから、離れていくための準備段階として、移行対象がになるのです。

アジアの添い寝

私たち日本人は母親が添い寝するのが普通ですよね。生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんの横に一緒に寝ています。そして,夜中に赤ちゃんが泣くと、お母さんはおっぱいを含ませたりします。新生児からの添い寝は、アジア人によく見られます。

欧米のベビーベッド

欧米では、新生児は生まれてすぐベビーベッドに寝かされ、お母さんは別に寝ます。そして、夜中赤ちゃんが泣いたら、お母さんが起きてきて授乳します。添い寝はしません。つまり、文化によって添い寝をしたり、生まれてすぐ別に寝たりしています。イギリスあたりでテディベアができたのは,移行対象が必要だったのかもしれません。つまり,赤ちゃんにとってお母さんと離れて寝るための安心材料が必要だったと。

指吸い

指を吸うという行動ですが,おっぱいを吸うときの安心感を再現しようとしています。臨床的には神経症性習癖といいますが,もちろん病気などではありません。赤ちゃんの心理を代弁するなら,寝るときのお供がないと気が済まないのです。

ライナス

アメリカの昔の漫画にスヌーピーという犬が主人公の四コマ漫画があります。そこにライナスという少年がいて,指を吸って毛布をひきずっています。みんなライナスはそういう子だという扱いです。たぶんアメリカでも移行対象は普通のことだったのではないでしょうか。

マンガドラえもん

アニメの話でいうと,ドラえもんの「おばあちゃんの思い出」というお話があります。のび太が小さい頃になくなったおばあちゃんに会いに行きます。ランドセル姿の自分を見てもらうためタイムマシンでです。冒頭,のび太のママはクマのぬいぐるみを捨てるよう言います。おばあちゃんに会ったのび太は,思い切り甘えます。おばあちゃんも「大きくなったのびちゃんでしょう」と,理屈抜きの包容力を示します。で,現代に戻ると,のび太のママはクマのぬいぐるみを修繕してくれてました。

アニメドラえもん

藤子・F・不二雄先生は,子どもの世界を描くのがとても上手でした。この作品も,移行対象の大切さをすごく伝えてくれると思います。アニメ映画では,おばあちゃんに甘えてだだをこねる幼児ののび太が特徴的。幼児のジャイアン,スネ夫,しずかちゃんが出てきて,癒されますよ。

精神分析理論

ウィニコットという人は心理学では精神分析という理論の学派の一人です。私たちが「口さみしい」と感じることがあります。何かをくわえたり,何か食べたりするのも,移行対象の名残かもしれません。

口さみしさ

タバコという習慣も,ニコチンの作用というのはもちろんあるでしょう。しかし,口さみしさを紛らわせてくれる意味もあると思います。昭和の頃ですが,「禁煙パイポ」という商品がヒットしました。禁煙する人がプラスチックの小さなパイプをよくくわえていたものです。私たちは赤ん坊の時,口から快感を覚えるようになります。精神分析の創始者フロイトが主張した考えです。それを裏づける現象の1つが移行対象ではないかと思いますね。他の育児の記事としてはこちらなどもどうぞ。

  1. ウィニコット, D. W. 橋本雅雄(訳)(1979). 遊ぶことと現実 岩崎学術出版社 Winnicott, D. W. (1971). Playing and Reality. Tavistock Pulications, London. ↩︎

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