父親の育児
最近は男性も育児休暇を取る人が少し増えてきた印象ですね。父親が育児をするというのはもちろん大切なことですが,それはなぜなのでしょうか?単純に母親と父親の二人の親がいた方が子どもにとっても心強いというのはあると思います。しかし,母親と違って父親特有の子育ての長所のようなものはあるのでしょうか。一般的にいわれるのは,父親は子どもを外に連れ出したり,男っぽい遊びを教えたりすることが得意というようなことです。でも,最近は男女平等が望ましいと考えられてきていますから,男っぽいとか,男らしいとか,そして女っぽいとか,女らしいとかそういう分け方自体に疑問をもたれる風潮もありますね。
男らしさと女らしさ
英語で性別を表すことばは「セックス」,男らしさや女らしさのような社会的に認識された性役割を「ジェンダー」といいます。性別は生まれたとき,性器によって分けられるものです。ジェンダーは,どのような性役割を受け入れて生きるかというものです。それ以外に,異性だけでなく同性や両方の性といった様々な好意の向け方があるという考え方を,「セクシャルオリエンテーション(性的志向性)」といいます。そして,セックス,ジェンダー,セクシャルオリエンテーションを合わせて,「セクシュアリティ」といいます。その人の性のあり方という意味ですね。もちろん異性愛の人はたくさんいで多数派な訳ですが,少数派として同性が好きな人もいるし,男性も女性も両方,パートナーの対象となりうる人がいます。これがLGBTQという性的マイノリティというものですよね。ところで,もし,父親が男っぽい遊びを教えるのが得意だから育児するのが大事というなら,当然男らしさが前提になるというか,男性の役割みたいなものを教えるのが父親という話になります。ですが,本当に父親が育児をする意味は,子どもに男とはどうあるべきか,みたいなことを教えることなのでしょうか。
父親の育児関与
アメリカを中心とした欧米圏では,父親の育児関与というテーマの研究がたくさん行われています。これは1970年頃にLambというアメリカの研究者が始めた研究が最初で,おおざっぱにいうと,父親は子どもと直接遊びなどを通じて一緒の時間を過ごしたり,できるだけ子どもが求めてきたらすぐそこにいるようにし,子育ての責任感をもつという3つのポイントが大切ということがわかってきました。
一方で,母子関係の研究はもっとたくさんの研究があり,歴史も長いです。ボウルビィという精神分析学者は,愛着という考えを主張しました。生まれてすぐの赤ちゃんは,1人の養育者,これは母親でなくても,血がつながっていなくても,特定の誰かがずっと世話をするということを意味しますが,そうして世話をしてもらうことが,その後の人生で人間関係を結ぶ上で大きな影響を及ぼすと考えました。
それから,バウムリンドという心理学者は,子どもの育て方を養育態度と呼び,優しく育てる態度や,厳しく育てる態度,威厳をもって育てる態度というようにいろんなタイプがあると主張しました。
バウムリンドの養育態度の考え方は,父親の育児関与の研究にも影響しています。
結局のところ父親の意味は?
この記事では,細かいことまで触れませんが,父親の育児にどんな意味があるのかは,まだ十分研究が進んでいないと思います。
ただ,私の考えでは,父親は母親をしっかりサポートするような意識をもつことが,結果的に家族の幸福感を高め,子どもの養育にもプラスに働くと思います。
そういう研究も少しずつ行われています。
父親は男らしさで子育てに勝負するとかではなく,むしろ,家族を広い視野で支え,子どもが育っていく場としての家庭を良い状態に維持していくことを,母親と一緒に担っていくというのが,現実的な役割かなと思っています。
だから,父親特有のとかいうことよりも,父親も母親も協力して子育てをするコツのようなものが大事かなと思っています。なお,父親母親関係なく親子関係については,こちらの記事でも触れています。
長くなりそうなので,今回はこの辺で。
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