中国人留学生のこと

全員卒業できた

縁あって中国人留学生を指導した。彼らもこの3月で卒業だ。1人は別の大学院に進学する。1人は発達支援施設に就職する。他の2人は中国に帰国して就職するが,中国は9月に学年が変わるので,本格的な採用は4月以降にずれ込むそうだ。中国はLINEやGoogleが使えないので,連絡がとれなくなる。彼らを1年次から教えていて,日本語の不自由さは確かに大変だった。ただ,日本人学生よりも直で礼儀正しい。何か指導すると「はい!先生」という。日本人学生にはない反応だった。この学年は中国人留学生が4名,僕のゼミに来た。多いなあと思ったが,ときどき興味があって話しかけていたからか,慕ってくれたようだ。コロナ禍が重なったこともあって,彼らと飲み会をすることはなかった。

苦学する彼ら

それぞれ個性的だったが,共通していたのはアルバイトをしながら経済的に大変な中で授業料を納め,大学を続けていたことだ。何回もいろいろな給付型奨学金の推薦書を書いた学生もいる。全ての学生がチェーン店やコンビニでアルバイトをしていた。日本と中国は所得の差があるので,実家はどの程度なのかわからなかったが,みんな節約して生活していた。ときどき中国に帰省したあとで,お菓子などを土産でくれるのだが,正直いって口に合わないことがほとんどだった。中国に行く機会はなかったが,現地にいったらたぶん食べ物は合わないんだろうなと思う。

できれば日本語能力はN1

卒論の指導では,やはり日本語力でだいぶ差を感じた。日本語能力検定にはランクがあるがN1が一番上だ。N1に合格した学生は,やはり指導しやすい。N2の学生は日本語が怪しいので,かなり修正が必要だった。このあたりは,大学教育でカバーできる範囲を超えているので,N1レベルの学生なら受け入れるのは指導しやすいと思う。僕の場合,彼らが3年次に,大学院への進学希望者が2人いた。そのままでは合格は厳しいと感じたので,既に大学院進学が決まっていた4年生の日本人学生に頼み,2人の個別指導をしてもらった。研究費からアルバイト代を捻出しての指導だ。3カ月ほどそれぞれ指導してもらい,日本語力や心理学の専門知識が少しは底上げできたかもしれない。はっきりとした効果はわからなかったが。

助け合う姿勢

日本人学生と違って,彼らは同級生の留学生同士の絆が強い。お互いに連絡し合い,助け合う。この意識は大きいなと思う。日本人学生だとどうしても孤立してしまう。適応が難しい学生だと日本人は単位がとれなかったり,留年したり,退学につながることもある。中国人留学生は,互いにフォローし合うので,卒業できる確率は高かった。日本語力が怪しい学生もいるが,なんとか卒業単位を揃えて全員が卒業できたのはよかった。正直,卒論指導が終わってほっとした。わけのわからない日本語を休日に送られてきて,コメントしなくてもいいと思うと,開放感がある。彼らは悪くないのだが。

スパルタな教育事情

中国の教育事情はいろいろと聞いた。かなりスパルタで教えられるようだ。しかし留学してきた彼らは,中国の受験戦争では勝てなかった訳だ。それとコロナ前の日本の経済状況の良さから,日本で就職して高収入を得ようとしていたのだ。しかしコロナ禍で,著しい円安を受けて,中国に帰国して大都市で就職しても日本で留学生が就職できる企業と収入は大差なくなってしまった。僕にはどうしようもないが,この数年で外国人からみた日本の位置づけは下がったと思う。安くなった訳だ。それでも中国人の彼らは日本を悪くいうことはないが。

いつか中国で

スパルタで教育されてきたこともあり,彼らはとても礼儀正しい。日本の学生にはなくなっているものがあるなと思う。教師としては心地よい。日本の学生の中には,挨拶さえしないのがたくさんいる。こじらせている学生だ。僕も面倒なのでそういう学生は無視するようにしている。中国人留学生は,声をかければ素直だし,礼儀正しい。そういう行動を身につけているだけなのだろうが,日本の学生の態度の悪さと比較したら,彼らの良さもすごくあるなと思った。しばらく中国人留学生の受験はなくなったし,中国自体が不況だからこれからもっと減るだろう。彼らと過ごした4年間は僕にとってもいい経験になった。いつか中国に行く機会があれば案内してもらいたいものだ。

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