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心理学の卒論で焦ってる人へのアドバイス

ステージ①:まだテーマが決まってない

多くの大学では,そろそろ卒論の締め切りに追われている大学生が少なくないでしょうね。私は心理学が専門なので,特に心理学の卒論を書くコツについて,まとめてみたいと思います。

今はもう質問紙調査を終えてデータ分析したり執筆に入ってる人がほとんどでしょう。なので,このステージ①は読み飛ばしてください。来年卒論を書く予定の大学生は読んでおいて損はないです。

最初はテーマが決まってない段階にすることをリストアップします。

  • 大学の図書館に行き,心理学の本が並んでいるコーナーで,興味がありそうな本を取り出して,パラパラめくってみる。
  • いくつか眺めてみて,なんとなく興味がありそうと思ったテーマがあったら,メモして図書館のパソコンで検索する。
  • 本の題名にキーワードを含むものを検索して,できたら発行年が新しめのものを4,5冊メモする。簡単な題名と,所蔵場所を表す記号がわかったら,見つけられる。
  • 所蔵場所を表す記号を頼りに,図書館内の案内などを参考にして,その本棚を探す。わからなければカウンターの司書さんに尋ねる。
  • 実際に本が見つかったら,手に取ってパラパラめくってみる。ここで大切なのは,「自分がわかりやすいと思うか」である。イラストや図表を多く使っている本はおすすめ。
  • いくつか本を探しては手に取ってパラパラめくるのを繰り返して,あくまでも「自分がわかりやすい」と思う基準で借りる本を決める。
  • 借りる本の冊数は5冊以内が無難。2週間~1か月の期間では読める冊数に限りがあるから,たくさん借りすぎても意味がない。
  • 借りたら,その中で一番簡単そうに思える本をとにかく読む。

ステージ②:論文をみつける

次に,心理学の研究をするにはお手本になる論文が必要です。借りた本のなかに面白そうな論文はありませんでしたか?できれば新しめの発表年で,〇〇心理学研究といったタイトルの雑誌に載っているものがいいです(査読の話とか細かいことはありますが,詳しいことは飛ばします)。で,次にやることはこれ。

  • J-Stageというサイトでその論文がないか探す。タイトルで検索する。見つかれば,PDFファイルですぐダウンロードできる。ダウンロードしたらUSBメモリに保存しておく。ファイルの名前は「発表年:著者:題名」としておくと後で整理するのに便利。
  • J-Stageにない論文だったら,大学の図書館の書庫にないか探す。探し方はカウンターの司書さんに教えてもらう。図書館の書庫にない場合は,文献複写サービスに申し込む。だいたい数日から数週間でコピーが入手できる。ただし何百円か料金が必要。
  • 論文が手に入ったら,特にどんな心理尺度を使っていて,どんな結果が出ているかを中心に読む。
  • できたら3つぐらい論文を見つけては読む。
  • そのうち,一番いいなと思える論文をお手本論文にする。

ステージ③:調査に入る

ここから遅めの人は今年の卒論生も急いで質問紙調査をするだろうから,読んでもらったら役に立つかも。

  • お手本論文が決まったら,その論文と同じように心理尺度を質問紙にする準備をする。ただし全く同じでは意味がないので,その論文の最後に書いてある「課題と今後の展望」というところを参考にして,プラスでできること,つまり他の心理尺度と組み合わせて質問紙調査するとか,調査対象者を変えてみるとか,工夫の方法はないか考えてみて,それを自分の卒論のオリジナリティにする。
  • あとは,ゼミの先生に質問紙の計画を報告してコメントをもらう。
  • OKがでたら紙かGoogleフォームで質問紙調査に入る。
  • 調査が終わったらデータの入力や加工,不備のチェックをする。
  • 分析ソフトを用意する。今は無料のHAD(清水,2016 )が多いと思う。
  • あとはデータ分析をする。清水先生のHPをみればだいたいわかるが,それじゃ足りない人はHADのデータ分析用のマニュアル本もあるから,購入してみてください。

引用:清水裕士 (2016 ). フリーの統計分析ソフトHAD:機能の紹介と統計学習・教育,研究実践における利用方法の提案  メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 59-73.

ステージ④:結果を書く

ここは1番目の難所でしょう。

  • 分析結果はExcelで表を作る。
  • 心理学の表は横線だけで書く。授業で習ってるはず。
  • 書いたら「Table 1 〇〇〇」とかのタイトルもいれる。
  • コピーして,Wordに「形式を選択して貼り付け→ワークシートオブジェクト」でペーストする。これが大事。移動したりできるように,右クリックの書式設定でレイアウトを変える。これでWord上で表が入れられる。
  • それを見ながら,結果を書く。結果も授業で習っているはずだが,どういう結果で,統計量(t値とかF値とかp<.05とか)もルール通りに習った通り書く。
  • 結果は,事実だけを書くところなので,「この結果は〇〇だからだと考える」のような解釈は書かない。考察で書く。

ステージ④:方法を書く

次に書きやすいのは方法ですね。気をつけてほしいことを中心にリストアップします。

  • 大学生を対象者にした場合,〇〇大学200名と書かず,大学生200名と書く。特定の〇〇大学の学生ことを調べたいんじゃなければ。
  • 調査時期は2024年11月などと書く。
  • 手続きは,授業で実施したのなら,質問紙は匿名で集団的に実施したと書く。
  • 加えて,調査は成績に関係がなく,あくまでも自主的に協力する意思を尊重すること,回答を途中でやめても全く不利益がないこと,などを説明したと書く。そして調査のときに実際にそれを説明する。これは研究倫理といって大事。
  • 調査内容は,使った尺度名,引用した文献,複数の下位尺度があるならそれぞれの下位尺度名(因子名),それぞれの項目数,評定法(5件法とか)をそれぞれ書く。

ステージ⑤:問題と考察を書く。

ここが2番目の難所でしょうね。

  • 問題(もしくは序論)は,まず卒論の目的を書く。自分が選んだテーマについて,どういうことを調べたかったか,具体的に使用した心理尺度や調査対象者の工夫によってどういうことを明らかにしようと思ったのかを簡潔に書く。
  • できれば,仮説として「〇〇という結果が予測される」というのを,いくつか書く。この仮説は,考察のときに仮説通りだったか,仮説とは違ったかを書くときに必要。
  • それにつなげるかたちで,図書館で借りた本や手に入れた論文をもう一度目を通しながら,自分の研究テーマではこれまでどんなことが研究されてきていて,まだわかってないことは何なのかという2つのポイントを大きな段落にそれぞれまとめるイメージで書く。
  • 考察は,仮説と一致したか違っていたか,違っていたとしたらその理由はなぜかを書く。それと,分析結果について,どうしてそういう結果になったのか,特に有意差がみられたところをメインに自分の解釈を「〇〇と考えられる」と第三者的立場による表現で書く。「私はこう思う」みたいな書き方はダメ。
  • できたら,その「考えられる」ことの根拠になってくれるような記述を本とか論文から見つけてこられると,それを引用すれば説得力が増す。

ステージ⑥:引用文献と謝辞

最後に引用文献とか謝辞とか,最後の仕上げですね。

  • 問題,方法,結果,考察で引用した論文や文献を,決められた書式で著者の名字のABC順に並べていく。
  • 書き方のルールは説明するのがややこしいので省くが,日本心理学会というところのHPに論文執筆マニュアルがあって,その中の基準にしたがっておけば問題ない。ただし,非常にいろいろ書いてある。自分なりに書いてみて,ゼミの先生からチェックが入ったら直すのがいい。
  • 漏れがないように,Wordの全文検索で,本文の例えば(山田,2024)とかの記述と,引用リストの「山田太郎(2024). ドカベンの研究 大甲子園研究,2,10‐20.」という情報が,卒論原稿の両方にあるかチェックすると効率がいい。
  • そして最後に,ページ数と目次をつける。
  • それと謝辞を書く。礼儀として指導教員や調査に協力してくれた対象者にお礼の言葉を書く。

これで卒論がなんとか書けるはずです。よく何ページ書いたらいいか聞いてくる学生がいるが,卒論は量り売りではないから,ページ数は気にしなくていいと思います。ただ,目安として問題部分で2~3ページ,考察部分で2~3ページ以上は書いてないと,手を抜いたなと思われても仕方ないと思います。ただ論文を書くのに根を詰めると精神はちょっと病みます。例えば前書いたこの強迫的になってしまうという記事なども参考にしてみて下さい。とにかく自分のメンタルヘルスも維持しながら,後は書くだけですね。グッドラック!

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